『寿命図鑑』という本があります。
例えば、江戸時代。
日本人の平均寿命は32~44歳だったとされています。
こう聞くと、江戸時代はみんな若くして亡くなってたんだなぁと考えますよね。
昔の人はそんなに身体が弱かったんでしょうか?
では、室町時代。
日本人の平均寿命はなんと!15歳だったとされています。
虚弱体質にもほどがある!
ていうか皆そんな若さで亡くなってたら、子孫残せないよね!
どういうこと?
このおかしな記録を理解するには、「平均寿命」の定義について認識を改めるべき人がほとんどです。
実は、平均寿命とは「この年に亡くなった人の平均年齢」ではありません。
「0歳児の平均余命」という意味です。
これを解説する資料として、厚生労働省「平成29年簡易生命表の概況」を示します。
60歳男性の平均余命は、23.72歳です。
では83〜84歳で皆死ぬのかと言えばそういうことではなく、85歳の平均余命は6.26歳、90歳の平均余命は4.25歳と続きます。
つまり、平均余命とは「この年まで生きられた人は、平均ここまで生きられる」みたいな考えかたです。
だとすると、江戸時代における大人の平均余命は何年なのでしょうか。
残念ながら当時の完全な統計データは計測されておらず、これだという数字が存在しませんが、
とある一般社団法人のWEBサイトでは、「江戸時代の60歳の日本人の平均余命がほぼ14歳」と紹介されています。
(「江戸病草紙」立川昭二・著からの引用?)
現代ほどではないとはいえ、長生きしている人は今くらいに長生きするんだなという印象です。
考えてみれば、葛飾北斎はおそらく88歳、島津義弘85歳、毛利元就74歳、徳川家康73歳…という説も。
今も江戸時代も、長く生きる人は長く生きていることになります。
ではなぜ、江戸時代の平均寿命が32歳〜44歳だと言われていたのでしょうか?
一番の理由は、昔は産まれて間もない乳幼児がたくさん亡くなっていたからです。
現在の平均寿命が延びているのは、乳幼児が亡くなっていないからということになります。
(老いて動けなくなっても延命処置によって生きながらえて死ねないという側面もありますが)
ちょっと考えれば、あまりに早く亡くなってしまう人がいれば平均「寿命」を押し下げてしまうと分かりますよね。
実際の当時の死亡年齢平均とは大きくかけ離れていることも理解できるはず。
時代劇にある大奥なんて、当時は子どもがたくさん死んじゃうから、そのための”数を稼ぐための制度”ですよ、言葉は悪いけど。
というわけで、江戸時代の平均寿命が30代〜40代なのは、新生児・乳児の死亡者数を含んでいるからです。
昔の人が30代で亡くなっちゃう、というのは大いなる誤解でした。