子どもに親の期待を背負わせるべきではない
自分の言ったことが子どものためになるのか、大人は責任を持つべき
遺伝子分析を取り扱っていると、親御さんからスポーツをしているお子さんの相談を受けることがあります。
指導者が、遺伝子分析が有意義だと認識していると、紹介されることもあります。
そんな依頼主の元に伺って、お金を出す親御さんと、実際に検査を受けるお子さんの同席のもとお話しますが、
たいてい良い雰囲気にはなりません。
ヒアリングしてみると、競技の目標が親御さんとお子さんとの間でかけ離れているからです。
親御さんは、用具や遠征など費用をかけているのだから、真剣にやって強豪校やプロを目指してほしい。
お子さんは、楽しくやって、可能ならライバルとのレギュラー争いに勝ちたい。
ギャップが凄いのです。
ある少年野球(リトルリーグ)をやっている小6のお子さんの遺伝子分析をした時は、
お父さん(ラグビー経験者)は息子さんに、走り方が変で遅いから清宮選手のようなパワースラッガー(瞬発力重視)になって欲しいと仰っていました。
※清宮選手が足が遅いとか早いの話ではなく、目指してほしいプレースタイルという意味です。
一方、息子さんはとても上手な先輩のようになりたいと仰っていました。有名なプロ選手はほとんど知らないそうです。
ただ息子さんは、私が見ただけでも身体は大きく、実際に試合で結果も残して評価されているそうでセンスは良さそうだと感じました。
検査から1カ月後、結果レポートのお届けと解説をしました。
結果は…「持久力」タイプでした。
「お子さんは、有名選手を例に挙げれば、清宮選手というよりイチロー選手に近い可能性が高いです」
そうお伝えした時のお父さんのガッカリぶりは凄かったです。
「イチロー選手に近いというなら、足が遅いというのはあり得ない」
そう仰るので、
「走り方を修正すれば、足が速くなる伸びしろがある遺伝子タイプとも言えますよ」
と返しました。
それならばとパーソナルトレーニングを受けてくださり、2カ月後にはベースランのタイムが大幅に縮まりました。
お子さんは、チームメイトから走り方が変わった、足が速くなったと言われたと大喜び。
小学生は足が速いと女の子にモテますよね(笑)
お子さんの走りを目の当たりにしたお父さんは、その後のトレーニングの指導を一任くださいました。
ただ、所属しているリトルリーグのチームでは身体を大きくするためにと、お弁当のご飯の量2合がノルマだったり、
骨や関節が未熟な小学生に、トレーナー不在のウェイトトレーニングが課されているとも聞きました。
遺伝子的体質からすると、どちらも逆効果ですからやめたほうがいいですよとアドバイスしましたが、
「みんながやっているのに自分だけがやらないわけにはいかない」
「やらないと指導者に怒られるし、試合で使ってもらえないので結果が出せないと強豪校に行けなくなる」
とのことでした。
小学生が大人の同調圧力に晒されているのです。
これでは、いくら遺伝子分析で本当の体質が分かっても意味がないじゃないかと悲しくなりました。
遺伝子分析で筋肉タイプを予め知って、競技を選ぶのはある意味有意義だと思います。
ただ、根性論でやってきた大人が、古い栄養理論、古いトレーニング理論を同調圧力で押しつけるのは、
子どもの個性的な成長を、ひいては未来を潰してしまいます。
子どもは、大人のビジネスの道具ではありません。
嫌がっているのに無理やりやらせるのは論外ですが、
大人が勝手に将来へのレールを思い描いて、それに子どもを乗せて途中下車できないようにするのも外道でしょう。
子どもにその競技をやりたい理由、どこを目標にするのかは共有しておくべきだと思います。
遺伝子分析を利用して、トレーニング&食事メニューを改善し、
プロチームを倒してしまった草チームも実在します。
そうやって有効利用してくれる理解ある指導者が増えることを願ってやみません。